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小島【書評】

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小島【書評】

お金を出して購入するところまではいかないけど、気になるから読んでみたい・・・と感じる小説を、図書館で借りてみるシリーズです。

第六弾は、小山田浩子の「小島」。14作品が収録された中短編集です。

このタイトルを利用して、しょうもないネタをSNSであげようと思って手にとった一冊でしたが、まさかこんなにおもしろい作品群が集まっているとは!

何がきっかけで好きになる作家と出会うかなんて、本当にわからないものですね。




小島の読後感

村上龍的な匂いのする作品には個人的に強く反応してしまう癖があって、この作品もまさに最初のページを開いた瞬間に、あ、これはあれだ村上龍の世界観を踏襲した作品であり作家であることは間違いない!という感じでピピっときたというか、インスピレーションが働いたというか、とにかく読むべき1冊に出会ったんだという予感がした。とはいうもののもう何年も村上龍作品を読んでないので、村上龍の匂いがするというのは自分の記憶の中で勝手につくりあげているイメージかもしれないしまったくもって勘違い以外の何物でもないかもしれないということも瞬時に理解できたので、とりあえずなぜ表紙をめくった刹那に村上龍の匂いがすると感じたかをじっくり考えてみることにした。というのは嘘で、湯船につかっているときは何もすることがないのでそういえば読後の感想でも考えてみるかというのが本当のところ。この小山田浩子という作家がもし映画を作ったら、村上龍と似たカメラワークをすると思ったのが同じ匂いを感じた最も大きな理由で、視線の動かし方が似ている、切り取る風景と心の動きの表現の組み合わせ方が似ているということがそう感じさせる最大の要因になっているのは間違いない。村上龍の匂いがするということと村上龍が書いた内容が全く同じものでないのは当たり前で、小山田ワールドに登場する人物は村上龍作品に登場するそれより、もっと日常に寄っているというか、どこにでもいる人物の日常を描写している。何よりすごいと感じるのは、これらがもし自らの体験に基づく作品ならばその記憶力や幼少の頃の感受性は驚異的であるし、もし全くの想像で描かれた作品ならば心理描写や知識量などは衝撃的ですらある点である。ひたすら現実世界を紡いでいるわけでなくミステリー的要素も効果的なエッセンスとして取り入れているあたりは「テニスボーイの憂鬱+コインロッカベイビーズ+五分後の世界」をないまぜにしたような世界観を作り上げることに成功していると思う。そして、この「小島」に収録されている短編「おおかみいぬ」の一節である下記のたったひとつフレーズだけで、とてつもない表現のセンスを感じ取ることができたのだ。
場面は、夕闇せまるコスモス園のベンチにこしかけて、紙コップのホットコーヒーを飲む主人公を描写していてその主人公の胸中を表す言葉がこうだ。
「カップの中は一足先により暮れているように見えた」
コーヒーカップの中を夕暮れ時の比喩として使う感性の凄さに、心の奥でワシャとかグシャとかガシュとかいう音が鳴ったような衝撃を受けた。
短編と中編14作が収録されている当作品は、田舎暮らしや広島カープをテーマにしたものもいくつかありその中でも「異郷」の迫りくる恐怖心というか得体のしれない人間心理というか主人公の過去のトラウマがフラッシュバックしていると感じさせる構成というか最終的に明言はされていないのにオチはそれかよと突っ込みたくなるような理由であるとか、とにかくもう大どんでん返しとはまた違った趣でグイグイと引き込まれていく凄まじさというのは筆舌に尽くしがたい。
そしてwikiをチェックした結果、小山田浩子の世界観に村上龍の匂いを感じた理由が芥川賞受賞歴があるという共通点によるものだと知り、なるほどそれならその他の芥川賞受賞作家の作品も村上龍の匂いを嗅ぎ取ることができるのか?と自問したところ即座に否という答えが頭に思い浮かんだのでやはりその他の小説家とは違う何かを感じ取った自分の感性を褒めてあげることにして新しい焼酎のボトルを開けた。
そもそも「小島だよっ!」というギャグを言いたいがために借り出した本だったのにまさかこんなにドハマリする内容だったとは想像の範疇を遥かに超えていて、これだから図書館通いはやめられないと再確認した次第でございます。

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