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【花になるらん・明治おんな繁盛記】まるでドラマを見ているかのような内容の高島屋創生期のお話

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花になるらん・明治おんな繁盛記

この作品のモデルになっている呉服屋さんは、高島屋です。

物語の骨格は、いわゆる山崎豊子スタイルで作られています。

  • 白い巨塔:浪速大学医学部のモデル → 大阪大学医学部ほか
  • 不毛地帯:壱岐正元のモデル → 伊藤忠商事の元会長瀬島龍三ほか
  • 華麗なる一族:万俵家のモデル → 岡崎財閥

このように、実際にあった話しに肉付けをし、登場人物の名前を変えて執筆するというパターンですね。

「花になるらん・明治おんな繁盛記」を当てはめると、

高倉屋のモデル → 高島屋

ということになります。作者の玉岡かおるさんは、兵庫県生まれで神戸女学院卒ですから、関西の有名企業の成り立ちを作品として残したいという気持ちが強かったのかもしれませんね。

その内容は、ジェットコースタームービーも真っ青の、スリリングな要素がたっぷり詰め込まれたものでした。詳しくは後述の感想で。




【花になるらん・明治おんな繁盛記】のあらすじ

京都伏見に新しく建った別荘にて、高倉屋の四代目当主勢田義市の母、みやびの古希祝いが催された。

その別荘には著名人が多く招待されており、その中には元内閣総理大臣の山縣有朋の姿もあった。

別荘の命名を請われた山縣有朋は、思案したあと「雅楽山荘」と名付けた。

これは、みやびが幼少の頃、「うちの名前のみやびの漢字は“ガガッ“のガなんや」と言ったことで、「ガガはん」と呼ばれていることに由来する。

「古来稀なる」年齢となったみやびは、自分の長くも短い人生を回顧していく。

その中心には、婿養子である夫の哲太郎(二代目義市)と共に、高倉屋を呉服の大店にまで成長させたこと、その夫の死後も、息子や職人たちと、日本の伝統工芸を世界に広げていった商売があった。

【花になるらん・明治おんな繁盛記】を読み終えた感想

関西では、夕方の情報番組のコメンテーターなどで有名な、玉岡かおるさんの作品を今まで読んだことがなかったんですよね。

それまでは、阪神タイガースの熱狂的なファンのおばちゃんというイメージしかなかったので、なんとなく激しい内容の小説を書いているんだろうなという印象だったんです。

ところが、今作品を読み始めた1ページ目から、「うわ、こんな面白い作品を書く人だったんだ!」と驚きました。

【花になるらん・明治おんな繁盛記】の登場人物は、キャラクターの個性がしっかりと立ち、それでいて、その時代背景から女性が置かれた立場を柔らかく表現しされていたことに感動しました。

舞台や設定は異なりますが、「細うで繁盛記」を思い起こさせるような、強い女性の生き様を見せつけてくれたんですね。

高島屋がモデルだと最後に気づいた

花になるらん

何の前情報もなく読み始めたので、最後の最後まで高島屋がモデルになっているとは気づかなかったんですが、「月季花(薔薇)」に言及されている文章内の、

「近代化した百貨店へと成長した高倉屋の社長に就き、包装紙にこの花のデザインを取り入れる頃になる頃・・・」

というセンテンスで、「あれ?これは高島屋の包装紙のことなんじゃないのかな?」とピンと来たっていう。。。

そして、ひとつの個人商店が、どんどん商売を広げていって、世界との貿易まで行うことになるプロセスは、「アメリカンドリームは日本にもあったんだ!」と思わせてくれるほどのワクワク感でした。

なんと言っても、日本の職人のハイレベルなスキルと芸術性が、欧米でも圧倒的なものとして称賛されるのは、なんだか誇らしい気分にさせられ、嬉しいものでした。

「ジャパンアスナンバーワン」と呼ばれ、世界を席巻した技術とセンスは、もしかして高島屋がなければ語れないものなのかもしれません。

もちろん、作品内に登場する陶器「サツマ」も、日本の職人の腕を認めさせるのに、大きな影響を与えているのは間違いないですけどね。

江戸末期から明治維新を経て、諸外国との貿易が始まった明治時代の京都や神戸の様子も描かれており、神戸生まれ神戸育ちの僕としては、神戸村と呼ばれていた頃の風景に思いを寄せることが出来て、それもまた楽しかったです。

難しい言葉がたくさん登場します。

読み進めていくと、見聞きしたことのない言葉が続々と登場して、

「まだまだ知らない言葉が多いなぁ、もっと勉強しないとな~」

と思った次第でございます。

他にも、「女将さん」と「御寮人(ごりょん)さん」の違いや、御寮人さんの上に「お家さん」がいること、「お嬢はん」を「おいとはん」と読むことなどなども、今回はじめて知りました。

これらの言葉が、関西の商売人の言葉かどうかまではわからないですが、子供の頃からドラマなどで聞き覚えのあった言葉の意味がわかって、すべてが腑に落ちましたね。笑

まとめ

明治の開国以前から、日本人が作り上げてきた芸術、工芸は世界に誇れる最高品質であったこと。

一握りの夢追い人によって、新しい扉は開かれていくものであること。

そこには、男女の差などないこと。

そして、悲しい出来事や苦々しく思う出来事があっても、時が経てば1枚の絵画のように客観的に眺めることができること。

そういった様々なことを教えてくれる作品でした。

実際に、こんなふうに生きたひとりの女性がいたことが、今の日本の繁栄の礎になっていると思うと、感慨深いものがありますね。

小学生にはまだ難しいかもしれませんが、中学生以上の子供にもぜひ手にとってほしい小説だと思います。学校の課題図書になっても良いのでは?と感じるくらいの良い内容の作品です。

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