
お金を出して購入するまでもないけど、読んでみたい・・・と感じる小説を、図書館で借りてみるシリーズです。
第一弾は、森晶麿氏の「黒猫のいない夜のディストピア」。
そもそも、ディストピアっていうのは、ユートピアと真逆の世界を表すわけですが、このタイトルから、
「どろどろに薄汚れた世界から、黒猫がいなくなった夜の話なのかな?」
と最初に想像してしまいました。まぁ、読み進めていくうちに黒猫というのは人間だとわかったわけですが、こういうキャラはキライじゃないですね。
ってなことで、簡単にレビューをしてみました。
黒猫のいない夜のディストピアの読後感
「美学」「モダニズム」「都市計画」「エドガー・アラン・ポー」「白のイメージ」「ゴシックファッション」「竹取物語」・・・
複数のテーマが複数の柱となって展開されていきつつ、最終的に「ここしかない」という着地点に収める筆力と構成力は、特筆に値する作品だと思う。
僕にとって、全く興味のないテーマがこれでもかと羅列されている作品でありながら、「ドッペルゲンガー」「暗号」というふたつの軸が内包されているだけで、一気に最後まで読みすすめてしまった。
ただ、祖母が別人を自分の孫だと思いこむくだりは、絶対に納得できん!そこだけがマイナスポイントかな。
論理的思考が大好きな人は、おおいに楽しめる内容になってます。シリーズのようなので、別作品も読んでみたいですね。
ちなみに、この作品を含めた黒猫シリーズは下記の通り。すべて早川書房から刊行されています。
黒猫シリーズ
- 黒猫の遊歩あるいは美学講義
- 黒猫の接吻あるいは最終講義
- 黒猫の薔薇あるいは時間飛行
- 黒猫の刹那あるいは卒論指導
- 黒猫の約束あるいは遡行未来
- 黒猫の回帰あるいは千夜航路
- 黒猫のいない夜のディストピア